あとがき:『白昼のたくらみ』

 2024年5月5日SUPER COMIC CITY 31お疲れ様でした。
 当日はスペースにお立ち寄りいただきありがとうございました。

 今回の新刊は『白昼のたくらみ』というお話です。
 3月に出したレトリンカレンダーのアイデア出しの時点で、隠居の導入を描く漫画と隠居先候補を巡るカレンダーのイラストが連動してる案がありました。
 結局カレンダーは音楽モチーフになり漫画パートはボツになったものの、展開のアイデアがもったいなかったので漫画単独で形にしました。

 ストーリー展開は、ベレトが隠居するまでの道筋を描いた話です。
 レトリンの隠居ものは大好きなのですが、しっかりと隠居のきっかけを描いたのは初めてな気がします。人のために働くの大好きベレトが、どうやって隠居するのか想像ができなかったので……。
 着想の順序は先に(本当は潔白の)リンハルトに浮気疑惑が浮上するという発想があり、よほどのことがなければありえないだろうその事態の理由付けとして、隠居のきっかけ作りが紐づけられました。
 リンハルトを軽薄な人物と描いてるように見えないか、モブ本に見えないか、などの不安もあったのですが一連の騒動を話の装置として機能させつつ、レトリン自体はハッピー相思相愛カップリングとして描けているのではないでしょうか。
 ちなみに作中の年代はエンディング後、十数年程度が経過したあたりです。緑髪3人は歳をとっておらず、カスパルだけ成長しています。
 カスパルの三つ編みは、ほどいたら父のような髪型になるのか試しているという設定です。

 またキャラクター解釈として、私が描くリンハルトの恋愛指向について触れています。
 ゲームに含まれるすべての要素を統括すれば、リンハルトは女性・男性のいずれをもパートナーにする可能性があるバイセクシュアルと取ることもできます。
 一方で私は全ルートでレトリンだったゲーム体験をベースに、リンハルトはベレト以外の人物との間に恋愛関係を見出さないベレトセクシュアルとして描写しています。
 ゲーム体験はプレイヤーによって異なる、ということがゲームならではの楽しみだと思っています。
 さらに風花雪月は複数人の支援Aを見ると関係性の整合性が取れなくなり、全部の支援が同時に発展していると解釈するのは難しい作品と認識しています。
 それらを鑑み、自身のゲーム体験および自分の中で重要視したいものを土台に同人誌を描くことにしてきました。ずっと大事にしているレトリン観であり、今回の話の流れで明確にできるものだったので形にしてみました。
 テーマがテーマなので、リンハルトにはベレトだけということをはっきりさせて不安要素を排除したいというのも目論見としてありますが。

 ストーリー、キャラクター解釈と来たら、あとはすけべ展開についてです。
 ベレトが真面目なゆえにとんちき行動をしてリンハルトを翻弄してるのが好き好き大好き。ベレトが真面目に相手のことを慮った結果投げる変化球を、好奇心旺盛ですけべなことにもわくわくしているリンハルトが受け止める。
 彼らはいつでもいたって真面目に考え行動しており、方向性が異なったとしてもそれらが不思議と噛み合ってしまう二人だと思っています。今回の素っ頓狂すけべ展開もそういう気持ちで、私も真面目に描きました。とても楽しかったです。

 文章にして振り返ることで、ストーリー・キャラクター解釈・すけべの3要素を入れると個人的に満足度の高い本になると学びを得ました。
 次もこの3点を満たすとんちきわくわくレトリン本が出ると私自身が嬉しいです。

 

▲今回の一番気合の入ったコマ。
 今回からペン入れのブラシをかさなるGペンに、ハイライトをアイライン下の一箇所に減らした変更がいずれも効果的だったので満足です。

 9月のオンリーは日程が合わず不参加です。
 年内の開催予定を見ても次の参加予定は立っていないのですが、イベントがなかったら新作を描けないわけではないので気ままにやっていきます。