エンディングまでのネタバレありです。
ふんわりと1周しただけの深入りはしていない感想です。
以下すべてネタバレ。
1本のゲームを遊んでよかったとするポイントをどう判断するか、私は“このゲームならではの味がする”かどうかで判断しています。
『Crossing Souls』ではこのゲームならではの味をたくさん味わったので、私にとって楽しかったゲームであることに間違いはないです。
キャプチャ:ガンマ線の放出を止められなくなる近隣住民
ほとんど前情報を得ないで遊び始めたこのゲームが独特だと思ったポイントは、まず「少年がガンマ線で事故してる」でした。ねえマット、まだ最序盤。死体を探しに行こうなんてまさにスタンド・バイ・ミーを想起させる序盤よりさらに前なんですよ。
これは一癖あるゲームを始めてしまったなとこの時点では思いつつ、次第にこのゲームを好きになっていく感覚は細やかな描写によって得ることができました。
キャプチャ:メインキャラクターの1人が暮らす集落
育った環境が違うメインキャラクターの関係性。
先頭キャラクターによってオブジェクトを調べた時の情報が異なる書き分け。
ドット絵ならではの無言の演技。
頼れる大人がいない中でどんどん進んでいくストーリー展開。
キャプチャ:子供達だけでこんなに遠くへ来てしまった
この追い詰められつつある子供達が早く安心できる状況にしなくては。その一心でプレイしていたのでまさかね。
メインキャラクターの生存者が1人になるとはね……。
終盤にクリスがセトの元に向かった時、これはもしやなんやかや上手くいって亡くなったみんなが帰ってくるのかな? なんて甘い想像をしてしまったんですよ。
だって画面左上の仲間達が、あまりにもいなくなっていて。常に表示されているメンバーリストが、いつの間にか喪失を訴え続けてくる効果を現すなんて。
とはいえ、ハートレスに撃たれたビッグ・ジョーの生命力が低下した遅々とした足取り。
あそこまで生存し敵対勢力にすら協力を望まれたマットが儚くも骨を折られる音。
もう既に向き合うべき死はしっかりと描かれていたわけです。
キャプチャ:象徴的な橋を渡るビッグ・ジョー
すべてが終わり、誰も夢のような生き返りは叶わなかったのと同時に、チャーリーはサバイバーになってしまっていて……。
パートナーに出会いたくさんの子孫に囲まれNPOでも活躍し、素晴らしい人生を過ごしたのかと思われたけれど、心はずっとあの時の仲間を求めていて……。
幼馴染がみんな亡くなったわけですから、生き残ってしまったと思わない方が無理です。そんな風に思う必要はないんですが、そう思い込んでしまうほどつらい。
その絶望の中で、死者の国があることを知っており最後の希望に思っていたチャーリーが、あの年齢まで生ききったことは強気な彼女らしい意地を見せてくれたのかもしれません。
キャプチャ:プレイ中のケビン達を表現しているのだろうけれど、生存したチャーリーすらも同じ道を歩んだのだと思ってしまう
そしてアル中だったクリストファーが更生して娘のチャーリーを手助けしていたことは何よりで……人間バッテリーになっていた方達は無事に生還できたということになり……。
ということは、クリスのご両親はまたしても息子を亡くしてしまったんですね……。
だからもうずっと喪失感がすごいんですよ。
ボス戦まではクリス視点で次々に仲間を失いながら戦い、ボス戦後は生き残ったチャーリーの視点を味わい、エンディング後には親の生還後に思いを馳せ…………。
オシリスお兄ちゃん、もうちょっと自分でなんとかしましょう!
これじゃみんなが犠牲になりながら生贄を捧げるために進んでたみたいじゃないですか……。みたいっていうか、そうってことですか……。
冒頭で言ったように楽しめたゲームではあるんですが、終わったあともこうしてやるせなさを引きずっています。オシリス&セト兄弟のせいで……。
このゲームで一番好きなキャラクターはブリック・M・ストーンウッドです。
彼はこの虚しい戦いになんら関係がない、旅する一陣の風だから……。
キャプチャ:軍事施設の謎の薄暗い場所に拘束されるおじさん
(あの部屋って行けるんですか?)